[第6回科学コミュニケーション研究会 年次大会のご案内] 終了しました
テーマ: 「科学の価値選択」
~社会における科学の価値はどのようにして決まり、
そこに科学コミュニケーションはどのように関与するのか
日 程:2012年9月8日(土)、9日(日)
場 所:東京大学 本郷キャンパス 小柴ホール(東京都文京区)
担 当:横山 広美、高梨 直紘(東京大学)、加納圭(滋賀大学)
■ 開催趣旨
民主主義の枠組みにおいて、科学・技術をどのように位置づけ、社会システムの中に組み込んでいくかは私たちが直面している難しい課題のひとつです。高度経済成長期を終え、科学・技術の意義が再び多様化しつつある現代日本において、どのようなプロセスによって科学・技術の社会的価値が決定されているのでしょうか。関係する諸分野の研究者をお招きし、科学コミュニケーションという視点から全体像を俯瞰していきます。
■ 参加方法
発表されない方は、当日直接会場の方へお越し下さい。事前申し込みは不要です。
いずれも参加費、登録費は無料です(懇親会費は当日、別途支払)。
■ 会場の情報
小柴ホール (東京大学理学部1号館2F)
■ 招待講師一覧
岡田 小枝子 氏(高エネルギー加速器研究機構)
加藤 尚武氏(京都大学 名誉教授)
川畑 秀明氏(慶應義塾大学 准教授)
北原 和夫氏 (東京理科大学 教授)
城山 英明氏(東京大学 教授)
吉田 徹氏(北海道大学 准教授)
■ 招待講演概要
岡田 小枝子 氏(高エネルギー加速器研究機構)
「研究機関と一般社会をつなぐ~ある広報官の業務経験からの報告」
概要:
民主主義の枠組みの中で、どのようなプロセスによって科学・技術の社会的価値は決定されているのか。そのプロセスの検証は、科学・技術の情報がどのように市民に送信され、受信されているのかを見ることから始まるだろう。
科学・技術情報は、送信元である研究現場から、広報活動を通じて、テレビや新聞、雑誌といったマスメディアを媒介した手法で間接的に、あるいは研究機関が独自に制作するウェブサイトや出版物、主催するイベントなどの方法で直接的に、市民に届けられている。直接的な送信方法については、研究機関が広報活動を積極的に推進する動きの中、ここ数年さまざまな試みがなされている。
本講演では、理化学研究所広報室で広報活動に携わって来た講演者の経験から、これらの試みの一角を紹介するとともに、研究機関や研究活動がどのように捉えられたか、広報活動を通じて垣間見える市民の反応について、事例報告を行う。
加藤 尚武 氏(京都大学 名誉教授)
「科学とポピュリズム」
川畑 秀明 氏(慶應大学 准教授)
「アートの表現と脳の役割:アートはどのようにコミュニケーションを生むのか」
概要:
アートはコミュニケーションだとよくいう。確かに作品は,感覚表現を通して何らかのメッセージを鑑賞者の知覚や感情に訴える。その1つが「美」である。しかし,キャンバスのどこを見わたしてもそこに美があるわけではない。私たちは表現されたものを脳で解釈して美を感じている。では脳はどのように美を感じているのだろうか。おそらく,アートにおける美とは,作品を通した作者と鑑賞者の協働的な体験であり,共感や共鳴を通して「価値」づけられる。本講演では,アートの表現がどのように脳で解釈され,表現者と鑑賞者との間でのコミュニケーションを生みだすのかについて考えていく。そして現代社会におけるアートの役割について,脳や心の働きを調べることの意義について明らかにしていきたい。
北原 和夫氏 (東京理科大学 教授)
「科学コミュニケーションはなぜ必要か:学術の公共性と新たな展開のために」
概要:
科学コミュニケーションが必要なのは、現代では、科学の営みは単に個人の興味と関心でのみ行われているのではない、ということの認識があるからである。まず、深いところで、科学の基盤は「なぜ?」という問から始まる。これは人類共有のものであるが、近代文明社会がむしろこの本能的な衝動を削ぎ落としたのではないか。現代の課題が、科学的知見を共有しない限り解決できない、という認識も出てきた。これが公共財としての科学といえる。さらに、近代科学は、対象と方法を限定することによって厳密な理解を可能にしてきた(と思っている)。限定しなければならない、というところから飛躍し、越境することがむしろ可能となり、求められているのが現代ではないか。そうすると、科学的知見に基づくコミュニケーションとしての科学コミュニケーションは、新しい学術の展開にとって、また、人間の本性への立ち返りにとって重要であると思う。
城山 英明 氏(東京大学 教授)
「同床異夢・価値選択と科学技術」
概要:
現代社会は科学技術の発達に伴う様々な便益を享受するとともに、安全・環境上の様々なリスクや倫理などの課題に直面している。科学技術には不確実性が不可避であり、また、多様な社会的目的のために利用可能である。同時に、科学技術活動も含む研究の自由の確保は社会の多様性の確保のためにも重要である。このような複数課題への同時対応が求められる科学技術を社会はどのようにマネジメントしていけばいいのだろうか。その際、複数の政策目的の同時成立による関係者間の「同床異夢」が可能であることもある。しかし、このようなことは常に可能ではなく、複数のリスク間でのトレードオフ判断が求められることがある。さらに、一定の目的は倫理的な観点から、他のどんな便益があっても許容されないという価値判断が求められることもある。また、このような判断は時間的な流れの中で下されることになる。このような科学技術ガバナンスの課題について概観したい。
吉田 徹 氏(北海道大学 准教授)
「脱政治化・ポピュリズム・熟議民主主義」
概要:
デモクラシーをめぐる困難が指摘されるようになって久しい。先進国では様々な理由から「民主主義」、もっといって「民主的意思決定」に対する幻滅が広がりをみせ、政治不信が高止まりするトレンドをみせている。それと同時に、民主政治における「リンケージ・モード」として、「脱政治化」「熟議民主主義」「ポピュリズム」などが観察されるようになった。
これらは互いに関連しているものだが、相互排他的なものではなく、「再帰的近代」の時代において新たな正当性の源泉を絶えず求めざるを得ないデモクラシーのバージョン・アップに貢献するものとみなすのが妥当といえるだろう。そこで、政治不信が拡大し、社会関係資本が減退しているとされる現代において、なぜ3つのリンケージ・モードが出現したのかを確認し、それぞれの短所と長所を確認した上で、民主政治の正当性はいかに定義され、確保され得るのかの手がかりを考えてみたい。
他の講演につきましても、順次情報を公開していきます。
■ プログラム
9月8日(土) 会場:小柴ホール(理学部1号館) | ||
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12:30- | 開場 | |
13:00-13:30 | 挨拶/趣旨説明(横山広美) | |
13:30-15:00 | 招待講演1(各講演45分) | |
13:30 | 吉田徹 (北海道大学 准教授) | |
14:15 | 加藤尚武 (京都大学 名誉教授) | |
15:00-15:30 | コーヒーブレイク&ポスターセッション | |
15:30-16:30 | 口頭発表1(1演題15分,12分講演3分質疑) | |
15:30 | 川越至桜「産業界、教育界と連携した中学生・高校生への科学技術コミュニケーション」 | |
15:45 | 羽村太雅「無関心層への波及により科学を文化に ~クリスマスサイエンスフェスティバル 2012 in 柏の葉を例に~」 | |
16:00 | 本間直幸「産学官連携に科学コミュニケーションがもたらす価値:コーディネート事例からの考察」 | |
16:30-18:00 | 総合討論I 登壇者:吉田徹、加藤尚武、横山広美 司会:加納圭 |
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18:00-19:30 | 懇親会(参加費1000円、当日徴収) |
9月9日(日) 会場:小柴ホール(理学部1号館) | ||
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10:30- | 開場 | |
11:00-11:45 | 招待講演2(講演45分) | |
11:00 | 岡田小枝子(高エネルギー加速器研究機構) | |
11:45-12:00 | ポスター発表(1演題3分,3講演毎に1分質疑) | |
11:45 | 伊與木健太「学生が行う科学コミュニケーション ”四季報”」 | |
11:48 | 佐野和美「リスクコミュニケーションの場における科学の役割」 | |
11:51 | 菊池誠「ゼロからの放射能勉強会はどれくらい大変か」 | |
11:54 | 田中啓「大学院生出張授業プロジェクト (BAP) のこれまでの活動について」 | |
12:00-13:30 | 昼食 | |
13:30-15:00 | 招待講演3(各講演45分) | |
13:30 | 城山英明 (東京大学 教授) | |
14:15 | 川畑秀明 (慶應大学 准教授) | |
15:00-15:30 | コーヒーブレイク&ポスターセッション | |
15:45-16:30 | 招待講演4(講演45分) | |
15:45 | 北原和夫 (東京理科大学 教授) | |
16:30-18:00 | 総合討論II 登壇者:川畑秀明、北原和夫、保坂直紀 司 会:高梨直紘 |
※ポスター発表のみ
黒田純平「小規模サイエンスカフェにおける発話の談話分析」
実験太朗「科学コミュニケーションとしての漫画・ゲーム」
■ 口頭・ポスター発表のご案内
今回大会では、招待講演に加えて一般発表(口頭、口頭+ポスター、ポスターのみ)も受け付けます。大会テーマ(「科学の価値選択」)に沿った発表を優先しますが、科学コミュニケーション分野の研究発表であれば、大会テーマ以外のものでも構いません。参加のための資格はありませんので、どなたでもお申し込みいただけます。たくさんのご応募をお待ちしております。
[発表形式]
口頭発表・・・12件程度を予定。12分発表、3分質疑応答。
口頭+ポスター発表・・・10件程度を予定。3分発表、ポスター掲示。
ポスター発表・・・10件程度を予定、ポスター掲示のみ。
■ 発表申込フォーム(2次募集)
申込は締め切りました
■過去の開催情報
2010/03/12 第1回科学コミュニケーション研究会 年次大会@京都大学
2010/07/24 第2回科学コミュニケーション研究会 年次大会@東京大学
2010/11/20 第3回科学コミュニケーション研究会 年次大会@日本科学未来館
2011/09/23-24 第4回科学コミュニケーション研究会 年次大会@東京大学
2011/11/20 第5回科学コミュニケーション研究会 年次大会@日本科学未来館
※過去の年次大会の資料につきましては、「資料」のコーナーにまとめられています。